2020年7月22日

柳生好之の記事が「パスナビ」に掲載されました。

https://passnavi.evidus.com/article/study/202008_04/

一問一答式だと答えられるが、文章題になると正答率が下がる…。
問題文の読み違いによるミスが多い…。そんな受験生は要注意。
これはケアレスミスなどではなく、読解力不足が原因だ。
近年の入試では、科目を問わず、問題文自体が長く複雑になる傾向にあり、読解力不足は致命傷になりかねない。
手遅れになる前に、この夏、読解力をガッツリ底上げしよう!

スタディサプリ講師・現論会代表
柳生 好之 先生

早稲田大学第一文学部総合人文学科日本文学専修卒業。東進ハイスクールなど大手予備校勤務やZ会東大京大コース問題制作を経て、リクルート「スタディサプリ」に参加。「文法」「論理」という客観的ルールに従った読解法を提唱し、誰でも最短で現代文・小論文ができるようになる授業を行う。近著に『小論文プラチナルール』(KADOKAWA)。

 日常語の読解力では不十分!
 文章を正確に読む訓練を


 最新の入試問題では大量の文章を読まなければならない問題が増えています。その背景には、文章読解が大学生活・社会人生活において必須の技術であるため、学生に文章読解の技術を身につけてほしいという思いがあります。

 「日本語なんだから訓練は必要ない」と思う人もいるでしょう。ですが、日本語にも大きく分けて2段階のレベルがあるのです。「日常レベル」と「学習レベル」です。よく「英語は論理的だが、日本語は論理的でない」という意見を聞きますが、それは「日常レベルの日本語」と「学習レベルの英語」を比較しているのです。日本語でも学習レベルになれば語彙は難しく文法や論理はしっかりしています。大学や社会で必要な文章読解力は、学習レベルの日本語の読解力です。単語を覚え、文法や論理を意識して文章を読む訓練をし、この力を高めていきましょう。

読解力を支える3つの要素

◆Point1◆
読書を通してではなく
教材を使って「語彙力」を増強する

 学習レベルの文章を読みこなすためには、語彙力アップが不可欠です。「普段から読書をしているから大丈夫」と思っている人がいるかもしれません。しかし、高校生が読む本の語彙レベルと大学生・社会人が読む本の語彙レベルは明らかに異なります。大学生レベルの本をすでに読んでいる高校生は、読解力に困ることはないと思いますので、ここでは一般的な高校生を対象として説明します。例えば、「恣意(自分勝手な考え)」という言葉は、大学生や社会人が読む本の中ではよく出てきますが、高校生が読む本の中ではあまり出てきません。このような言葉は、単語帳や現代文の問題集を使って効率よく覚えていくのがよいでしょう。

 国語の先生は語彙力アップのために読書をすすめることもあると思います。それは、国語の先生になるような人たちはレベルの高い本を読むのがもともと好きで、知らぬ間に読解力がついていたという人が多いからです。しかし、そのような人はごく一部です。一般的な高校生に対しては、語彙力がない状態で大学生レベルの本を読むのはあまりおすすめできません。現代文の入試問題の短い一節ですら読むのに苦労をしている人が、辞書を引きながら大学生レベルの本を読むのは効率が悪いのです。そもそも読書は、自分が読みたい本を読むものです。語彙力のない人が大学生レベルの本を読みたいとは思わないはず。ですから、読書を通してではなく、単語帳などを使って語彙力をつけるほうが理にかなっているのです。

Check! 入試頻出! 押さえておきたい語彙カテゴリー

●評論文重要語
高校生の日常会話ではあまり用いないが、大学入試の評論文では頻出の用語。
例)契機=ものごとが変化するきっかけ

●小説文重要語
高校生の日常会話ではあまり用いないが、大学入試の小説文では頻出の表現。
例)気の置けない=気を使う必要がないさま

●書き取りで問われる漢字
書き間違いの多い漢字、あるいは、文脈を理解していないと書き間違えがちな漢字。
例)タイショウ=対象・対照・対称

●読みが問われる漢字
読むのが難しい漢字、あるいは、読み間違えをしやすい漢字。
例)膨大=ボウダイ

●カタカナ語
日本語文の中で用いる際にカタカナ表記される英語などの外来語や、新しい言葉。
例)パンデミック=世界的流行

●慣用表現
高校生が日常会話で用いることはあまりないが、大人がよく用いるようなことわざ。
例)虫の知らせ=よくないことが起こりそうであると感じること

◆Point2◆
文の構造や成分を意識した読み書きを実践し、
「文法力」を鍛える

 現代日本語のネイティブスピーカーである私たちは、現代日本語の文法の勉強をしようという発想がありません。「英語や古文ならいざ知らず、現代日本語の文法なんて勉強しなくても大丈夫」と思っている人がほとんどです。本当にそうでしょうか?

 「日常レベル」と「学習レベル」の話を思い出してください。数年前、僕の実家にアメリカの交換留学生がホームステイをしたのですが、その子はハイスクールで「グラマー(文法)」「センテンス・ストラクチャー(構文)」の授業を受けていたと言っていました。つまり、英語のネイティブスピーカーは、母語の文法と構文を高校の授業でしっかり習っていたのです。一方、私たち日本人は、文法の学習を小・中学校でさらっとやる程度で、文法を使って読み書きするトレーニングはほとんど受けていないのです。

 日本語でも、学習レベルの文章を読むときには、文法を意識して読む訓練が不可欠です。学校の教科書や問題集の文章を読むときには、「ここからここまでが主部で、述部はここ」「この修飾部はここからここまでで、この部分に係っている」という「係り受け」を意識した読解トレーニングをしましょう。また、文法を意識した作文トレーニングも効果的です。読んだ文章の要約文を書くときには、文法、とりわけ「主部」「述部」「修飾部」といった文の成分や「重文」「複文」という構造を意識して書きましょう。1日10分程度でよいので、普段の授業の予習や復習のときにやっておくと力がつきますよ。

Check! 文を分解・分析して、成分や構造を探る

文を分解・分析して、成分や構造を探る

◆Point3◆
論理のルールを押さえ、
問題文から推論する「論理力」を磨く

 共通テストなど今後の入試で最も重要になってくるのが、「論理力」でしょう。従来、論理力が重視されてきた科目には現代文と数学がありましたが、今後は全科目で論理的思考力が問われます。ところで、「論理」とは何でしょうか? それぞれの科目に論理があり、それらは別物であると考えている受験生もいるようですが、論理は元来一つのものです。

 一例を挙げてみましょう。「演繹」という思考法があります。演繹とは「前提を真だと認めたならば、必ず帰結も真だと認めなければならない導出」のことです。例えば、「K助はテストで0点を取った。テストで0点を取るものはバカだ」という前提を真だとします。すると「したがって、K助はバカである」という帰結は必ず真だということになります。このような推論の仕方が演繹であり、今後あらゆる科目で出題されるでしょう。「本文に答えがない」と言われるような英語や現代文の問題の正体は、この推論です。本文に「K助はテストで0点を取った。テストで0点を取るものはバカだ」と書いてあって、正解の選択肢に「K助はバカである」と書いてあるのです。本文に直接的に書かれているわけではないけれども、本文を真だと認めたならば必ず真だと認められるような選択肢は正解となります。

 新入試では「思考力・判断力」が問われると言われていますが、論理のルールを駆使して真偽を判定する力が「思考力・判断力」であることを覚えておきましょう。

Check! 問題文の情報から論理的に推論する力を鍛える

■「演繹」を使って、本文に直接的には書いていないことを推論する
例文:
大学に合格したならば、勉強したということだ。
K助は勉強しなかった。
→本文に書いてなくとも「K助は大学に合格しなかった」と言える。
Point
対偶は必ず真
AならばB。CはBでない。したがって、CはAでない。→○

■誤った推論をしないよう、「逆・裏・対偶」に注意する
例文:
大学に合格したならば、勉強したということだ。
K助は勉強した。
→「K助は合格した」とは限らない。
Point
逆は必ずしも真ではない
AならばB。CはB。したがって、CはA。→×